パッシブデザインとアクティブデザイン
パッシブデザインとは、エアコンなどの住宅設備に頼らず出来るだけ、太陽の光や自然風などの自然エネルギーを利用して快適な家づくりを目指すという設計思想・設計手法です。季節ごとに変わる太陽光の日射角度の違いや立地によって変わる風向きに合わせてた設計を行い、エネルギー消費を抑えながらも住環境を作ることができます。電気やガスの使用量を減少させるため、省エネで地球環境にも良いということで最近注目を集めています。
せっかく日当たりの良い土地に建物を建てているのに設計次第では室内に自然光がほとんど入ってこないということも考えられます。パッシブデザインでは、室内にまんべんなく自然光が入ってくるように工夫を行う事で、日中は照明器具に頼ることなく明るい室内で過ごせる環境の実現を目指します。パッシブデザインは、ついつい機会に頼りがちな「快適な室内気温」や「明るい室内」をなるべく自然の力だけでつくるため、毎月の光熱費の節約にもつながります。パッシブデザインにおいて活用すべき自然エネルギーは以下の3つ考えられます。
3つの自然エネルギー
太陽光
自然風
地熱
これらの3つのエネルギーをいかにして最大限活用できるかを考えるのがパッシブデザインの根幹ともいえるポイントであり設計者の腕の見せ所ともいえるでしょう。
アクティブデザインとの違い
パッシブデザインの対となる設計手法に「アクティブデザイン」という手法があります。パッシブとは「受動的」という意味なのに対して、アクティブとは「能動的」という意味が込められています。アクティブデザインもパッシブデザインと同様にエネルギー消費を抑え環境負荷低減を目的としている点は共通していますが、設計手法に大きな違いがあります。パッシブデザインは太陽の光や自然の風を最大限活かして快適な住空間作りをつくり出そうとするものですが、アクティブデザインは先進技術を利用してエネルギー利用の最適化を目指すデザインのことです。
アクティブデザインを実現するためには、太陽光発電やエコキュート、エネファームなどの「アクティブシステム」が不可欠です。設備を導入するために高額な費用が必要になる場合もあります。
アクティブシステム
太陽光発電システム
太陽熱利用の給湯システム
高効率空調、全館空調システム
高性能断熱材、高気密サッシ
アクティブシステムを活用し、エネルギー消費を抑えるのがアクティブデザインです。「パッシブデザインは自然の力」を「アクティブデザインはハイテクの力」を利用して省エネ性を高めていく。
パッシブデザイン5つの設計ポイント
パッシブデザインを設計する上で5つのポイントを抑えて置くことが必要です。どれか一つだけに特化した設計を行うだけでは、パッシブデザインの本来目指すものに到達することは出来ないため5つの設計ポイントをバランスよく取り入れ地域や立地の特徴を考えた設計を行う必要があります。実際に設計を行う中でそれぞれのポイントが対立することも考えているため、いかにうまくその対立を解消するかがパッシブデザインの最大課題です。
断熱性・気密性
パッシブデザインの省エネルギー性を考えたときに、断熱性・気密性は欠かせません。断熱性と気密性が低い住宅では、外気温の影響を受けやすくなってしまいます。「冬は暖かく、夏は涼しく」の実現が難しくなってしまいます。断熱性と気密性に優れた住宅は、暖めた快適な室温を維持させることができます。断熱性と気密性をイメージするときは、魔法瓶を考えると解りやすいと思います。魔法瓶も中に冷たい飲み物を入れておくと長期間冷たい状態を保ってくれるように、断熱性と気密性に優れた住宅は室内の温度を常に一定に保ってくれます。断熱材の材質や施工カ所、外壁材の種類やサッシの種類を工夫することで、断熱性と気密性を高めることができます。
太陽熱利用
昼間の強い太陽熱を断熱性と蓄熱性を一定以上高めた建物の一部に蓄熱し、夜間に暖房として使う手法です。空気循環システムを通じて床下に送り込み、家の中全体を暖めます。蓄えられて太陽熱は床下にくまなく送られ、リビングや洗面所、トイレや各居室などの家中の気温が一定に保たれます。熱を集める「集熱」と「断熱」「蓄熱」の3つバランスを上手く整える必要があり、レベルの高い設計が求められますが、上手く設計することができれば、かなりの暖房エネルギーの削減が期待できます。
日射遮蔽
夏を涼しく快適に過ごす為には、日射遮蔽はとても重要な要素です。夏の強い日差しに当てられていては、室内の涼しい状態を維持するのに多くの電気エネルギーをひつようとしてしまいます。カーテンやブラインドなどの窓廻りの付属品、軒やひさしを工夫することで日射を遮断することができます。日射遮断にこだわりすぎると、日当たりが悪く暗い室内になってしまう可能性もあります。一般に夏は太陽が高い位置にあり冬は太陽の位置が低いので日射角度を考慮してバランスを見ながら設計を行う事が大切です。
昼光利用
昼光を上手く利用して、昼間は電気を付けなくても明るい室内空間をつくり出します。証明にかかる電気代を節約できるため、省エネルギー効果も期待できます。光を上手く取り入れるためには、吹き抜けやトップライトを設けたり、窓の位置やサイズを工夫します。ひさしや軒も昼光がどれだけ家に入り込むかに大きく影響するため十分に検討しなければいけない部分です。土地の向きや近接している家の建て方などを考慮し、土地の個性を活かした設計を意識する必要があります。
自然風利用
春や秋など、外気温が快適な季節には、自然の風を取り入れるkとおも必要です。自然風を上手く利用する事でエアコンを付けなくても快適な住環境を作ることができます。また、自然の風を取り入れることで室内の換気を行い、室内に溜まった埃や熱を排出することができます。空気を効率良く循環させる為には、窓を対角線上に配置したり高低差を設けたて配置するなどの工夫も考えられます。吹き抜けも2階の窓からリビングの空気を循環させるにはいいでしょう。換気性を高めるのは難しいですが廊下部分に腰窓を設置し、居室にスリットが入ったドアを採用するなどで対応が可能です。
パッシブデザイン
断熱性・気密性
太陽熱利用
日射遮蔽
昼光利用
自然風利用
快適な空間と高い省エネ住宅を両立する事です。ゼロエネルギーハウスの普及が推進される中、今後ますます、パッシブデザインの重要性は高まっていくと予測されます。